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イルカ17歳レモン色の暗部日記


9/15〜

9月14日 晴れ
侵入者ありとの連絡を受けて出動。
無印なのが不気味。
尋問部の人この間からずっと家に帰れてないらしい。がんばれ〜。

9月13日 晴れ

涅槃クッキーのレシピを三代目に聞かれた。渋々答えたらじーさまは「その材料でなんでこの味を出せるんじゃ」と頭を抱えていた。そりゃおいしくなるように試行錯誤をくり返したんだからな!コハルばーちゃんにはスッポンとハブエキスは入れるなと言われた。バンパネラの君は病み上がりにいきなり滋養のあり過ぎるものを食べたせいでひきつけを起こしてしまったらしい。また入院…。ゴメンナサイ…。


あー、うるさいのが帰ってきた…。
つか単独任務だったのか。見ないと思った。


9月12日 雨

バンパネラの君が退院してきた。おめでとーございます!
お祝いに腕をふるってクッキーを作った。開発部にいた時に密かに研究していたスゴ味の自信作!
……だったんだけど、一口食べたバンパネラの君がぶっ倒れてしまった。わ〜、なんで?!ひとかけらを恐る恐る口に入れた薫の君がしばらく固まった後、一言、「涅槃に行けるクッキーだな」と言った。い、意味がわかりません…。ちゃんと味見したけど、俺どうもないよ?

クッキーは三代目預かりとなりました。やだなあ、説教くらうのかしら…。

9月11日 雨
ハッピーターンの味の濃いやつだけいっぱい食いたい

9月10日 晴れ

侵入者アリとの通報を受けて出動。
4人ほど捕まえました。

普段暇なのになんで体を休ませたい時に限って狩り出されるんだろうな。傷口塞がんないよー。

9月9日 晴れ

台風一過。
あんな嵐は何十年ぶりだとじーちゃんが言っていた。
うん、たしかにすごかったな。

今日は暴風雨でやられた森のトラップの見回りに借り出された。
俺が仕掛けた芸術的な連鎖トラップも駄目になっていた。あーあ。
派遣された所は、トラップ班に見知った顔が多かったので、一応声をちょっと変えて「ここ、俺がいじってみてもいいですか?」と聞いたら、一番近くにいたトラップ忍が「はいぃ!」と姿勢を正して返事した。…こいつ、俺がトラップ班にいた時はやたらとえらそうにしてたやつだよなあ。性格丸くなったのかしら。変なの。
駄目になった起爆剤や糸などを取り替えていたら、周りにいたトラップ忍達が「おい、あそこは」「いくら暗部でも」「他の所をしてもらった方が」とこそこそ話すのが聞こえてきたけど気にしないで作業を続けた。ここは俺がやーるーの!俺しか出来ないの!
うきうきとトラップを張り(ついでにバージョンアップ)、それを地図に記し終わったらもう夕方になっていた。ああ、楽しい時間はすぐにすぎるなあ。森の入り口に戻って、班長(これも顔見知りだ。お久しぶり!)に地図を渡したらしかめっ面で地図を広げた。うわー、この場でチェックかよ〜。相変わらずだなあ。あまりにもじっと見ているので俺はもじもじとしてしまった。トラップ班に入りたての頃はこの人によく怒られたので、正直今でもちょっと怖い。しばらくして班長が「よくできていますね、さすが暗部の方だ」と言ったので俺は盛大に安堵した。はー、怖かった。班長が地図を他のトラップ忍に渡すと、こちらを興味深そうに伺っていた連中がわっと地図の周りに集まってきた。「わー、すげえ!あのうみのトラップを再現してるぜ!」「あ、ここ、アレンジしてある!すげえ〜」「やっぱ暗部はすごいなー!」とこそこそ言っている。何だ、うみのトラップって。そんな名前で呼ばれてんの?なんかかっこいいなー。俺ってもしかしてすごかったのかなー。

気分よく帰宅したが、さすがに疲れた。トラップって頭も使うし意外に体も動かすしでかなり疲れる。
今日はぐっすり眠れそうだ。

9月8日 台風上陸

火影邸の警護。
台風の雨風のせいでびしょびしょ。
傷がふさがりきってない俺には正直辛かった。
ぶるぶる震えていたら薫の君が耐寒服を貸してくれた。
うーん、ほんとお母さんみたいだ。お母さん。ママン。

あのなー、ごめんなさい、の一言ぐらい言えねえのかよ。

9月7日 台風接近 
もーうるさいなあ!ぷーぷー言うな!

9月6日 晴れ 
待機。
頭の白い人がえらく話し掛けてきた。
あんた、誰?
知らない人とは話しません!

9月5日 晴れ 
朝から病院に行った。
大きな傷はある程度自分で治していたので傍からはほとんど無傷に見えるだろうけど、もう体はぼろぼろだった。
あー、ほんとあの白髪ムカツク。
外来の受付に行ったら、医療班の時に同じチームだったホウショウがいた。ホウショウは俺を見るなり、「わ、なにそれ、満身創痍じゃんお前」と言った。おお、さすが医療忍。その場でぺたぺた触られて、「おいおい内臓少しやられてるぞ」と脅され、診療室ではなく研究室に連れ込まれた。研究室には顔見知りばかりいて、「チーフ、イルカを診てやってください」とホウショウが言うと、部屋にいた全員がこちらを見た。その後は歓迎会のようになった。ちやほやと治療され、お茶と茶菓子をいただき、愚痴を聞いてもらった(もちろん暗部員である事は伏せて)。その上「イルカ、こっち戻ってこいよ、俺達寂しいよ」とまで言われて俺は上機嫌だ。いやー俺って人気者だったんだな〜。なんで転属になったんだろ。引き止める医療忍達に後ろ髪をひかれながら研究室を辞して、俺は蕗子様を見舞う事にした。面会謝絶の文字はまだ取れてないけど、まあ大丈夫だろう。廊下にスタッフがいない隙を狙ってこそっと病室に入ったら、千本が飛んできた。あぶねっ!とっさに変な姿勢でよけたので傷にかなり響いた。いてててて。「蕗子様〜、俺です〜」と言いながら衝立の奥を覗くと、なぜかベッドはもぬけの殻だった。「プペちゃんだったのね、ごめんあそばせ、うふふ」という声がしたほうに目をやると蕗子様が戦闘態勢のまま微笑んでいた。ちなみに天井だ。この人面会謝絶の重体じゃなかったのだろうか。大丈夫なのかな。そんな俺の心配をよそに、蕗子様は軽やかにベッドのうえに降りると、「私、もう元気でしてよ」と言った。うん、そうだろうね。つか、なんていうか、気のせいでしょうか。ビルドアップしているような…。上腕の太さ、俺の太ももと同じくらいありそうなんだけど…。でもまあビルドアップしてようが顔が傷だらけになって鬼瓦が割れた鬼瓦になってようが蕗子様は蕗子様なので気にしないことにする。蕗子様は本当に調子がいいようで、俺の愚痴(今度は名指しで)を聞いて笑ったり、俺のぼさぼさの髪を楽しげに梳いてくれたりした(気持ちよかった…)。あー、俺蕗子様の下に付きたいなあ。
散々蕗子様と遊んで帰宅したらもう夕方だった。……明日も休みたいなあ。

9月4日 晴れ 

無事(?)里に帰還。じーちゃんの元へ行ったら薫の君が仁王立ちで俺を待っていた。それを見たら体中の力がホッと抜けてその場にへたりこんでしまった。つか、俺、もうほとんどチャクラ残ってないんだよ。慌てて駆け寄ってきた薫の君にもたれたら、本当に力が出なくなって、体を起こすことすらできなくなった。少し休んだら力も出るだろうから待機所に連れていってほしいと言ったら、俺を背負ってくれた。涙が出そうになった。執行室を出たところで白髪で猫背の人とすれ違った。なんか声をかけてきたけど俺は無視した。俺、あんたなんか知らないもん。知らない人に話しかけられても相手しちゃ駄目って母ちゃんが言ってたもん。

つまりは俺はウサギだった。それに気付いたのは今浜と里の中間あたり、隈野に至ってからだ。山に入ってから幾人かの尾行の気配がした事で俺はそれを悟った。国事に関わってくるSランクの場合は普通任務が言い渡される前に諜報部による物見がなされる。それは必ずだ。諜報部にいたころ、俺はそういう仕事を何度か経験している。ルートやトラップ、近隣諸国の情勢、その他諸々を間違いなく調べ上げ、上層部に知らせるのだ。そしてそれを受けた上層部は、その情報を元にチームを編成し、準備を整える。なので、こんな風に幾数の尾行がつくなら単独任務なんてありえないはずだった。釈然としないものはあるけれど、こうなったら俺はうさぎらしく敵を引っ掻き回さなくてはならない。薫の君やサン・ジュスト様も知っていたかもしくは勘付いていたんだろう。だから苦無や巻物といった普通は他人にホイホイ渡すものじゃないものをくれたのだ。…………俺はものよりも忠告が欲しかったけどな。
今浜とは逆方向の那古にルートを変えながら、俺はずっと試したかった新しいトラップを所々に仕掛けていった。連鎖を組む余裕はないので単発ばかりだったが、まさか移動しながらトラップを仕込んでいるとは思わなかったようで、敵は面白いように引っかかっていった。
それで俺はちょっと油断してしまい、敵がどこの奴なのかを確かめようとトラップが発動した場所へ行った。引っかかって四肢を吹き飛ばされた敵の額宛は無印だった。ということはどこかのお抱え忍び、ということになる。もう少し調べると奥歯に自害用の毒が仕込まれてあった。無臭でほんの少し苦味のある赤い毒は毬忍びが使っていたものだと医療班にいた時に文献で見たことがある。そしてその毬は大戦時に滅び、残党が丘咲のお抱えになったと言う話をホムラのじーちゃんに聞いたことがあった。ということは、丘咲のお抱えということだ。なんで?丘咲は火の国でも、1、2を争う大大名だ。律儀で情深く、野戦では右に出るものなし、天下一の弓取りと評判でお上も一目置いている重鎮である。そのお抱え忍びがなんで木の葉をつけるのか。わかんないなあ。
ぐるぐる考えていたら、ぱぱぱと手裏剣が飛んできた。1つを取ると鍵十字だった。やっぱり毬者だ。いつの間にか囲まれていた。つか何人チームなんだよ。こんな下っ端一人に対してなに必死になってるんだよ。手裏剣だけでなく鎖釜や千本、苦無など色々降ってくるのを、俺は避けるだけで精一杯で反撃などできなかった。攻撃に鋭さはないが、上手く逃げ道を塞いでくるのできっと手練の上忍が混じっているに違いない。ウワー、こりゃ本気で死ぬかも!そこで俺はサン・ジュスト様がくれた巻物に手をかけた。封紙に「昇」としるされたそれを手渡された時に「危なくなったら開けること」と言われている。きっと口寄せかなんかの類いだと思う。俺は勢い良く封を切った。
……しかしなにも起こらない。
もしかして某かの印か契約が必要なのかと巻物を手繰って見ると(その間毬忍も何が起こるのかと見守っていた)そこにはびっしりと文字が。

エロ小説だった。

それからの事はよく覚えていない。怒りにまかせて大業を連発したような、ただひたすら逃げたような。覚えているのは白髪のエロ仙人を殺そうという思い、それだけだ。

3日間隈野山中で逃げまくり(うさぎになるのは一日で良かったのだが上手く逃げ切れなかった)もうへとへとだ。途中火影のじーちゃんの忍猿が俺を探しにきたけど、その猿も下っ端だったので俺とに一緒に逃げる羽目になった。どうせなら猿侯出せやじじい!
薫の君やお姉様方が待機所であれこれ世話を焼いてくれたが、俺は盛大にむくれていたので、足が利くようになったと同時に速攻帰った。
明日はもうサボってやる!

追記
明日は休めという連絡がじーちゃんから入った。
当たり前だよバカバカバカバカ!

9月3日 雨 
殺す殺す殺す殺す殺す殺す

9月2日 晴れ 
ぐあー!あいつ殺す!!!!

9月1日 晴れ 

明日から、暗部に入って初めての単独任務だ!
火影のじーちゃんの手紙を今浜の領主に持っていく、というお使い任務だが、手紙の内容がアレでナニなので一応Sランクがついている。うひゃあ、Sだってさ!わくわくするなあ。
一人で行かせるのはまだ早いだのついていくだのと散々だだをこねていた薫の君は、しぶしぶといった感じで小姑をやめたあと、お守りだ、といって苦無をくれた。それは嬉しいけど、俺ってそんなに頼りないかなあ。サン・ジュスト様はなんだかぼんやりしていたけど、Sランクの任務につきます、と報告したら、じゃあこれ旅のお供に、といって巻物をくれた。それは嬉しいけど、それだけかよ?ほんと愛想のないやつだなー。

覚書
人の心の
凪、嵐

8月31日 晴れ 
久しぶりにサン・ジュスト様とボルジアの君に会った。
雪忍と対戦したので諜報部のほうに借り出されていたらしい。
サン・ジュスト様がなにやらショボンとしていたのでポケットに入れていた飴をあげた。
そしたらがっと腕をとられて「この飴はどこで買った?」と聞かれた。
龍噂です、と答えたら、その瞬間に瞬身で消えてしまった。なんだなんだ?この飴、探してたのかな?確かに美味しいもんなー。
ボルジアの君と薫の君がこちらをじっと見てたので、彼らにもあげた。薫の君にはサスケ君(仮名)の分、と言って二つあげた。なんとなく嬉しそうだった。ほんと弟さんの事かわいいんだなあ。いいなあ、俺も兄弟欲しい。

8月30日 晴れ 

蕗子様とバンパネラの君が帰ってきた!
もちろんまだ歩けるわけもなく、輿に乗ってだけど。
木の葉病院に入ったと言う事を一緒に帰ってきたホムラ様がわざわざ教えてくれた。
お見舞いに行きたいけれど面会謝絶らしい。
顔を見るぐらいいいじゃねえかとホムラ様に言ったら、それなら、と火影のじーちゃんの所に連れて行かれた。見たいのは爺の顔じゃねえよ、と暴言を吐きそうになるのを我慢してたら、じーちゃんが奥の部屋からなにやら透明の丸い物体を持ってきて印を組んだ。すると光ったので覗き込んだら、そこに病院のベッドらしい所でいろんな器具をつけて眠る蕗子様が見えた。すっげー!じーちゃんいいもん持ってんなー!蕗子様は包帯グルグルで痛々しいけれど、前よりも表情がやわらかかった。よかった。回復に向かってるんだ。

せっかくじーちゃんに会ったので、ついでにこの前会った子供の事について説教しておいた。
じじいは何がおかしいのか終始ニヤニヤしていた。むかつくなあ。

8月29日 晴れ 

久しぶりの出勤。 雪の国関係で正規部隊はばたばたしていたみたいだけど、暗部はずっと待機だ。 する事がないので薫の君に体術の稽古をつけてもらった。ほんと強いなー、この人。今日も死ぬかと思いました。

蕗子様、どうしているんだろうなあ。

8月28日 晴れ 

最近ラーメンを食ってないので、今日は一楽で夕食を取る事にした。
面倒だったので寝間着(Tシャツとスウェットのズボン)につっかけ、髪も結わないまま、ぼさぼさと家を出た。
一楽へ行く途中、小さな子供がうずくまって泣いているのに出会った。
無視するのもなんなので声をかけると、見上げた顔の右半分が赤く腫れていた。殴られたのだろうか。
よく見ると裸足だし、手足はどろどろだし、その上、金髪で眼が青かった。
金の髪に青い眼はこの里ではもうあの子供しか残っていない。
あの子、こんなに大きく成ったのか。
俺が何もいわずに見下ろしたままなのが怖かったのか、子供が這って逃げようとするので、俺はそれを捕まえた。捕まえたまま、だっこする。
俺、小さい子が泣いてるの、駄目なんだよな。ほっとけない。悪い癖だと思うんだけど。
そのまま一楽に行くと、親父が「またか」という顔をした。夕暮れ時は泣いている子供が多い。
見つけるたびについつい一楽に連れてきてしまうので、親父にはいつも呆れられているのだ。
不安そうな子供を椅子に座らせ、注文した後何気なく店内を見回すと、カウンターの端に座った男と目が合った。同い年ぐらいだろうか。目元に大きな傷があるが、ものすごい男前だ。銀髪を綺麗に撫で付けていて、服もなんだかおしゃれ。ぼさぼさでださださ、しかも汚い子供付の俺とは大違いだ。つかお前みたいな美形がそんな格好でラーメン屋くるんじゃねえよ。こっち見んな、見世物じゃねえんだよ。
子供は驚いた事にラーメンを食った事がなかったのだそうだ。うそだろ、こんなうまいものを!
今までの人生損してたなー。と言うと、子供が口をゆがませた。どうやら笑ったつもりらしい。
うわー。やべえ!じーちゃんなんとかしてやれよ、こいつ。
俺は子供の口元に指を置いて、ぐいと引き上げた。笑うのはこう、と言ったら、親父がそうだぞ、こうやるんだぞ、と言ってにいと笑った。親父、あんたもたいがいいい人だな〜。

子供と別れた後、一楽にいた男前に絡まれた。どういうつもり?とかあれがなんなのかわかってるの、とか低い声で気持ちの悪い事を聞いてくるので、泣いている子供を慰めて何が悪い、おいちょっとそこ座れ、お前らよってたかって小さな子供相手に気持ち悪いんだよ、とガミガミ説教してやった。男前はその人形のような顔を呆けさせておとなしく俺の説教を聴いていた。すっきりした。きつく言い過ぎたかもしれないと思い、ポケットに入ってた飴をあげたら余計にアホ面になっていた。男前でもきりっとしてないと男前に見えないものなんだな。
今日は良く眠れそうだ。

8月27日 晴れ 

掃除。俺掃除苦手。
でもあれって一度汚さに開き直るともう片付け出来なくなるから、酷く散らかる前に細々と片付けたほうがいいんだよな。
昔の俺の部屋は酷かったもんなあ。もうあの部屋には戻りたくない。

ついでに父ちゃんと母ちゃんの形見を引っ張り出してきて必要なものは陰干しした。
これを教えてくれたのは火影のじいちゃんだ。
こうやって思い出と優しい関係を築きなさい、と言われたのを、あの頃はぜんぜん意味がわからなかったけど、今はわかる気がする。

干し終えた形見を仕舞っていると、押入れの奥に変な打ち付けがあるのを発見した。なんだろうと思って引っぺがしてみると、ぽっかりと穴があいていて、そこから冊子が何冊か出てきた。
「イチャイチャパラダイス」というタイトルの冊子は、藁半紙を袋折にして紐でまとめてあり、紙面は手書きの汚い文字でびっしり埋まっていた。内容は……いわゆるエロ小説だ。手書きだが父ちゃんや母ちゃんの字ではない。二人とももっと几帳面で綺麗な字を書いていた。そもそもこんなものを母ちゃんは書かないし、内容からいって父ちゃんのものなんだろうけど…。
ぱらぱらとめくっていると、一番薄くて汚い冊子からなにやら紙切れが出てきた。
そこには父ちゃんの字で
「私に何かあった場合はこれを息子に譲るものとする」
と書かれてあった。
ある意味遺書だ。
父ちゃんも母ちゃんも忍びだったが、遺書の類は全く遺されていなかった。
どちらかが難しい任務につく時はかならずもう片方は家にいた。
それは俺を一人置いていかないためだ。
どちらかが必ず俺のそばに残り、俺を守るつもりでいたから遺書など残す必要はなかったのだ。

俺は紙切れを冊子にはさみ、元の位置に戻した。ふたもした。
唯一遺された遺書がエロ本に譲渡についてだなんて、とても父ちゃんらしい。
とても複雑な気分だ。

…見なかったことにしよう。

8月26日 晴れ 

たまりまくっていた汚れ物を一気に洗濯した。
一日つぶれた。

赤玉が蕗子様からの手紙を持って帰ってきた。
よれよれの字で「元気よ」と書かれてあった。
む、無理させちゃったかな…。

8月25日 晴れ 

里に帰還!

じいちゃんに報告を終えた後、サン.ジュスト様が「雪の国じゃ土産を買って来れなかったから」と言って逢阪での土産をくれた。
綺麗な懐中時計だった。
わ〜、わ〜、もう今までむかついていた事全部許してやるよ!

明日から3日間の休暇。
え〜3日しかもらえないの〜。
掃除洗濯で全部つぶれそうだな…。

8月24日 晴れ 

道中何事もなく、姫を無事にお上の元に届ける事が出来た。
振り向きもせず、促されるままに城の奥へ消えた姫の後姿があまりにも心細く、俺は思わず隣にいたモナ…いや、アスマ・・・いやいやモナリザの君の手にすがった。モナリザの君は何も言わずに大きな手で頭をなでてくれた。しばらくそれに甘えていたら、サン.ジュスト様が「いつまでもかわいこぶってないで早く変化を解きなさいよ。里までは自分の足で行って貰うからね」と非常に憎たらしいことを言った。この人絶対友達いないよ。

その日は城下町逢阪で一泊する事になった。
固まっていては目立つので、皆ばらばらの宿に泊まった。
他のメンバーはそれぞれ町に繰り出して遊ぶつもりらしいが、変化した姿でずっと背負われ続けた俺はもうへとへとだったので、部屋でごろごろして過ごした。
ほんとしんどかったなあ。
俺を背負うのがア…いや、モナリザの君からサン.ジュスト様に変わってからが特に辛かった。
すごい高低差のあるルートを使うんだもんだから酔って仕方がなかった。あれ絶対わざとだよ!ほんと陰険だよな〜!頭弱いくせに!友達いないくせに!

蕗子様達が心配なので、忍鳥(愛鳥)の赤玉(オカメインコ・オス)に手紙を持たせ壱岐へ向かって飛ばした。
どうか少しでも元気になっていますように!

8月23日 晴れ 

安芸まで滞りなく来たが、さすがに姫の体を気遣って今夜はキャンプだ。姫は何一つ文句を言わないが、ずっとおぶさっているというのは思っていた以上に苦痛だ。それに彼女は帰る家と父を一度に失っている。しかも叔父に奪われたのだ。その精神的苦痛は計り知れない。
何も食べようとしない、眠ろうともしない彼女に、紅さん(中忍の名前だ)がせめて睡眠だけでもとるようにと暗示をかけていた。
彼女はこの日のことをどんな風に思い出すのだろう。
苦しみはこれからだ。
悲しみや恐怖で一杯だった頭が、少しずつクリアになっていき、自分の周りを見渡せるようになった時、彼女は気付くのだ。もう自分を無償で守ってくれる存在はないのだと。その心細さをあの小さな体で受け止めきれるのだろうか。
依頼人に深く干渉しない、ということは下忍になってから教えられた。
でも父と母をなくした時の自分とどうしても重ねてしまう。あの時の衝撃と混乱が今彼女を襲い、そしてそれからの孤独が彼女を包むのかと思うとどうにかしてやりたいと思ってしまう。一人生きていくので精一杯の俺にはどうしようもない事だとしてもだ。

焚き火の向こうで紅さんに抱かれて眠る姫をぼんやり眺めていたら、ふと、足元が涼しくなった。
何かと思って見たらサン.ジュスト様が姫に変化したままの俺の着物の裾をびらっとめくっていた。
「下着も女物かなあと思ってぇ」と頭の弱い事を言うので思わずその四方八方な頭をなでてしまった。
こんな時にそんなことしか考えられないなんてこの人はなんてかわいそうな人なんだろう。ほんとかわいそうだ。

ちなみにちゃんと女物をはいている。正直怖くて凝視できない。

8月22日 晴れ 
諜報部から雪忍による姫君探索の手が壱岐のお隣安房にまで延びているとの情報が入ったので、姫君をお上の元まで連れて行くことになった。メンバーは元気な俺と薫の君、敵に遭遇しているボルジアの君とサン・ジュスト様、サポートに里から救援で駆けつけた中忍(すっげえ美人!)とアス…いやモナリザの君だ。もちろん姫は背負っていくとして、途中で雪忍と遭遇した時のことを考えて影武者を用意することになった。その話でまとまった時、メンバー全員の視線が俺に突き刺さった。うん、嫌な予感はしたんだ。でも道中おぶっていってもらえるし、いざ遭遇した時は影武者側が雪忍のお相手をできるということなのでしぶしぶ承諾した。姫チームは薫の君とボルジアの君。俺チームはサン.ジュスト様、モナリザの君、中忍(名前聞くの忘れてた)だ。決行は今夜。わあ、どきどきするなあ。トラップの準備しておこう!

8月21日 雨 
姫君を連れたサン・ジュスト様が戻ってきた。というか、発見した。薬草を採りに行った時にアシスタントで連れて行ったお抱えの一人が、二人が城近くの山中で倒れているのを見つけたのだ。姫は憔悴しているものの、擦り傷程度しかなくほぼ無傷、サン・ジュスト様も裂傷があるものの、蕗子様達に比べたら可愛い傷なので無事だといってもいいだろう。ただ子供を連れての逃避行で体力やらチャクラやらを使い果たしていて、指を動かす事すら出来ない状態だった。それでも俺が姿を見せるまでは警戒体制で、お抱えはその殺気だけで彼らに近づけない有様だった。すごいなー、この人。エロ本を手放せないかわいそうな人だけどすごいよ。とりあえず連れて帰ろうとしたけど、サン・ジュスト様はお抱えに触られるのを嫌がるし、俺一人では力の抜けきった彼を背負いきれないので、姫をお抱えに預けて先に帰らせ、俺たち二人になった所で得意技を披露することにした。術を発動した瞬間、サン・ジュスト様は絶叫してたけど、その後すぐに元気になった。やっぱり俺ってすごいよなー。・・・なんで医療班を追い出されたんだろうな。サン・ジュスト様は「お前の前では絶対チャクラ切れを起こさない」と言った。なんで?いつでもどこでも即回復させるのになあ。人に頼る事を恥ずかしいと思う人なのかな?
ともかく生きて帰ってきてくれてよかった!よかった!

8月20日 雨 
サン・ジュスト様が帰らない。


8月19日 曇りのち雨 

医療班の小隊が到着した。とりあえず俺の診立てと状況を軽く説明し、補佐に入る事にした。顔見知りばかりなので俺が俺だとばれるかと思ったんだけど、面をつけているだけで意外にわからないものらしい。

サン・ジュスト様がまだ帰ってこない。

8月18日 

昨夜、モナリザの君が負傷した蕗子様とバンパネラの君を連れて帰還した。医療班が来る前に、俺が応急処置をする事になったのだけど、二人の、特に蕗子様の酷い傷は、いくら元医療班の俺でも今の環設備では正直手の施しようがなかった。蕗子様は頭部に大きく火傷を負っていて、あんなに綺麗で豪奢だった巻き毛も頭皮ごと剥け落ちていた。とりあえず俺にできることを、と思い、水遁を応用して火傷の熱を吸い取っていると、「私は大丈夫だから泣いては駄目よ」と傷だらけの手で頭をなでてくれた。蕗子様はほんとに強いなあと思った。俺の面の中は大洪水だ。
覚書:
蕗子様
・頭部に極度の冷気による火傷
・右腕に裂傷、骨に異常はなし
・左わき腹に裂傷。内臓には至っていない。
・男でした。

バンパネラの君
・高所から落ちたためと思われる全身打撲
・男前でした。

クーデターは雪隠れの忍びと国王の弟によるものだった。
国王は崩御、姫君は行方不明。遅れて帰ってきたボルジアの君によると、姫はサン.ジュスト様が城より連れ出したようだ。

でもそのサン・ジュスト様が帰ってこない。

8月17日 

8月16日 晴れ

今日もお抱え達の訓練だ。
ホムラ様には薫の君がつくことになったので、訓練は俺の担当になった。
やるからにはせめて下忍の上ぐらいにはなってもらいたいので、前から思っていたように個人単位でカリキュラムを組む事にした。一人一人面談をして話を聞いていくと、6人いるうちの3人が本格的な忍びの訓練をしたことがないという事実が判明した。流石にたまげた。領主や忍び頭は雇う時にそこらへん何も気にしなかったんだろうか。というかどいつが忍び頭だ。城のお抱えには普通忍び頭がいるものだ。そう思いたずねるとこれまた当番制でまわしているという。たまげた。ほんとうにたまげた。今までよくそれでやっていけてたものだなあ。呆れを通り越して感心してしまった。こんなどんぐりの背比べから選出するとあとあと問題になりそうなので、諜報部にいた時に知り合った城仕え経験のあるはぐれ素破を、それとなく紹介してもらうようにホムラ様に頼んでおいた。ついでにカリキュラムを見せて、こんな風に訓練するつもりです、と言ったら、お前は教師に向いているかもな、と言われた。これ以上履歴書に書く文字数を増やしたくないので嫌だと即答した。俺は蕗子様みたいな強くてエレガントな暗部員になるんだから。

お抱え達の訓

8月15日 晴れ

今日はお抱え達に、薫の君と一緒に体術の稽古をつけるということで、まず二人で模擬演技して見せたんだけど、途中から薫の君が本気を出してきたので、終わってみれば俺が稽古をつけられていた。死ぬかと思った。

向こうで何かあったらしく、モナリザの君とボルジアの君までもが雪の国へ向かう事になった。
出発前のモナリザの君に声をかけたらボロを出した。やっぱりなあ。

にーちゃん、無事に帰ってきてね。

〜8/14

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